スポーツ障害

野球肩

  • 野球ボールを投げる時の痛みは、主に肩腱板の炎症、肩の不安定性、関節唇(かんせつしん)の損傷から生じます。しかし、その原因を特定するのは困難であり、肩の不安定性を測るのも容易ではありません。外来の診察以外、MRI検査も必要であり、場合には肩関節鏡検査も考えられます。
  • 野球肩の症状としては、野球のボールを投げるとき、痛みが生じます。一部の方は、ボールを投げるとき、肩がゆるく又は肩が外れそうような気がして、投げる時の痛みよりも、投げた後が痛みを感じます。
  • 肩腱板の炎症は、主に投球のフォームを作る時、短い期間で無理にして、肩腱板に過度のストレスがかかって引き起こされます。従って、しばらくの間投球数を減らし、投球後アイシングを行い、さらに、毎日に数回冷やすことも重要です。炎症に対して、薬剤を服用し、腱板の運動(ストレッチと強化)を行います。腱板の運動は、腱板の許容範囲内で行わなければならない。痛みを感じない程度で、徐々に増やしていくことが重要です。腱板の使いすぎによる炎症は、回復するまでの時間がかかりますので、選手とコーチの忍耐が必要です。
  • 肩腱板の炎症を防ぐのは、まず運動前のウオーミングアップと肩のストレッチをし、運動後アイシングを行います。また、肩の筋トレは普段からすこしずつ増やしながらやっていくことが重要です。筋肉の強化によって肩の安定性が得られ、肩の不安定性による筋腱と靭帯の負担が減ります。
  • 肩の不安定性は、肩が外れるようなものではなく、自覚しない程度で潜在性の不安定性が、ボールを投げるとき、筋腱と靭帯が余計に引っ張られることによって、ストレスがかかります。そのため、筋腱と靭帯が損傷され、痛みが生じます。
  • 肩関節唇の損傷は、直接的に肩関節の痛みとなるのは論議があります。関節唇は、肩の安定性を維持するのは、重要な構造です。関節唇の損傷が原因で、肩自身のゆるみで不安定が生じることではなく、支えが弱くなったため、肩の安定性が障害されます。
  • 肩の安定性を測るのは、容易ではなく、また種々のテストは主観的な検査であり、客観的に評価ができません。痛めた肩を、押したり、引っ張ったりするだけでも痛くなりますので、診察室での検査で、肩の不安定性を判断するのは困難です。肩関節はいろいろ筋肉と筋腱に包まれているため、関節唇損傷を診察室で判断することは、色々のテストがありますが、確実ではないと言われています。
  • 成長期の子供は、肩関節に成長軟骨板があり、成長軟骨板は、筋肉、筋腱、靭帯より弱くなっています。突然に痛むことではなく、繰り返して肩に余分な負担がかかると、徐々に成長軟骨板が損傷されます。そのため、野球試合イニング(回数)が少なく、場合には投球数も制限されいます。
  • MRI検査は、腱板の評価には有効ですが、肩の不安定性や関節唇の損傷を診断するのは困難です。また、実際の損傷よりも、ひどく見られる場合もあります。MRI検査のみで、病態の判明は不可能です。
  • 野球肩の治療は、多岐にわたり、損傷の部位と程度によって、保存治療からいろいろ手術手技が必要です。まず上述の保存治療を行い、数か月間の治療にもかかわらず、改善しない場合、関節鏡精査と手術となります。但し、関節唇損傷の中に、上腕二頭筋付着部がはがれて、上方肩関節唇損傷というものは、重症ですので、手術が必要です。

野球肘

  • 投手は、野球ボールをよく投げるから、当然のことで肩と肘に障害がきたしやすい。大人の場合は、ボールを投げるとき、ストレスは靭帯と筋腱によって吸収されます。成長期の子供では、ストレスは靭帯と筋腱が吸収できず、関節のもっとも弱いところに、骨の表面にある軟骨がストレスを吸収する仕組みになっているため、関節面軟骨が痛んでいきます。成長軟骨の損傷は、子供達の関節形成を妨げます。
  • 繰り返してボールを投げることによって、肘内側の筋腱と靭帯が伸ばされるため、外側の関節に圧迫の力がかかります。その圧迫力が成長期の子供の関節軟骨を痛めます。さらに、内側に引っ張られている力があまり大きいと、肘内側筋腱が付いているところの骨が剥離します。外側の関節面軟骨も圧迫されるため、軟骨がはがれて、関節の中に入り込みます。関節軟骨が損傷を受けると、関節の成長障害や変形を引き起こします。
  • 成長期の子供は、関節の近くに成長軟骨板が存在します。成長軟骨板は、骨、靭帯、筋腱ほど強くないので、野球のボールを投げる時に関節のストレスが集中しやすい。ストレスは、成長軟骨板が耐えられる限界を超えると、軟骨板に損傷が生じるため、痛みを感じるようになります。アイシングや薬を使って、ストレスによる痛みを無理やり我慢すると、やがて成長軟骨板が折れてしまいます。
  • 野球肘の症状としては、まずは肘に痛みが生じます。ボールを投げ続けると肘が腫れて、関節の曲げ伸ばしが障害されます。
  • 野球肘の診断は、レントゲン検査で、成長軟骨板が広くなり、関節面の損傷を調べます。痛みが強い場合は、MRI検査も必要です。レントゲン検査が正常に見えても、MRI検査で異常が認められることがあります。
  • 治療としては、普段から肘に負担がかかり過ぎないように、投球数と投げる回数を制限しなければならない。痛みが生じたら、隠さず、無視せず、まず素直に安静を保ちます。痛みが改善したら、正しい投球フォーム指導の下で、徐々に練習を再開します。関節軟骨に病変があれば、手術をしなければならない場合もあります。

膝蓋・大腿疼痛症候群

  • 膝蓋・大腿疼痛症候群は、膝の前にあるお皿(膝蓋骨)の周りに、鈍い痛みが生じます。ランニングやジャンプのスポーツに多く見られ、ランナーズ膝やジャンパー膝と言われることがあります。痛みは、走るとき、階段昇降のとき、スクワットのとき、長く座った後に痛みが悪化します。高齢の方が多い変形性膝関節症と違って、膝蓋・大腿疼痛症候群は思春期の若い人が多いです。女性が男性より2倍多く見られるのは、女性の骨盤が男性より広いため、股から膝になす角度が大きいと言われています。
  • 原因としては、ランニングやジャンプのスポーツで、膝が繰り返して使いすぎて、ストレスがかかると、お皿の下に炎症が生じます。股と膝の筋肉のアンバランスや衰えが、お皿を正しい位置に保つことが出来なく、お皿が内側か外側に傾いているため、スクワットのとき、膝が内側に傾くと、お皿と太ももの骨とぶつかり、痛みを引き起こします。また、大腿四頭筋短縮のため、お皿が上に引っ張られて正常の位置よりも上にあります。膝を曲げるとき、お皿に強い圧力がかかり痛みが生じます。お皿の脱臼や骨折、手術特に膝蓋靭帯を用いて前十字靱帯再建術を行った後に、お皿の位置が変化すると、膝蓋・大腿疼痛のリスクが高くなります。
  • 予防法として、大腿四頭筋と股外転筋の強化によって、しゃがむとき、膝が内側に傾くのを防ぐことで、お皿と太ももの骨の衝撃を減らします。体重超過の場合は、減量します。スポーツの前に、5分ほどのウオーミングアップをします。ストレッチ運動を行い、筋肉の収縮性を向上させます。運動量を徐々に増やしていき、突然の変化を避けます。合う靴を使って、スポーツを行います。
  • 診断をするには、痛み部位を確認し、痛みの誘発する体位を検査します。レントゲン検査で、膝の軸とお皿の位置をチェックします。必要があれば、MRI検査も考えます。
  • 治療としては、まず安静を保つことが必要です。痛みを誘発する動作や姿勢、例え階段昇降やスクワットを避けます。痛みが強い場合、消炎鎮痛剤を使用します。リハビリは、大腿四頭筋と股外転筋の強化を重点として、しゃがむとき、膝が内側に傾くのを矯正することがもっとも重要です。サポーター、膝装具、ティーピング、アイシングなどは、痛みの改善に役立つことがあります。稀に、お皿の軟骨が衝撃を受けてはがれる場合、関節鏡手術にて、はがれた軟骨を摘出する必要があります。また、外側支帯が硬いすぎて、お皿が極端に外側に傾いている場合には、外側支帯解離を行います。

オスグード病

  • オスグード病は、膝の少し下のところ、すねの骨が出っ張って、痛みが生じます。主に思春期に伴う急成長中の青少年が発生します。オスグード病は、ランニングやジャンプや急激に方向変換のスポーツ、例えサッカー、バスケットボール、フィギュアスケート、バレーボール、バレーに多く見られます。
  • オスグード病は、12歳から14歳男の子と10歳から13歳女の子に起こりやすく、それは女の子が男の子より思春期が早いためです。オスグード病は、成長が止まると、自然に寛解されます。オスグード病は、片方の脚に多いが、両方の脚にも珍しくない。痛みは数週間から数か月までに続き、成長が止まるまで繰り返します。
  • 原因としては、スポーツ中ランニング、ジャンプ、膝を曲げる動作で、大腿四頭筋がお皿を介して、お皿の靭帯がくっついているすねの成長軟骨を繰り返して引っ張ります。すね上の方の軟骨が損傷を受けて、痛みと腫れが生じます。また、引っ張られて空いてきた隙間を埋めようとすると、新しい骨が成長され、骨性コブが出て来ます。成長軟骨にストレスがかかり続けると、徐々に大きくなります(上図)。稀に、骨性コブが完全にはがれてしまう可能性もあります。オスグード病の痛みが消えても、骨性コブは半永久的に残りますが、骨性コブがあっても、膝の機能障害は起こりません。
  • 診断は、すねの上の方に痛み、はれ、でばりがあり、レントゲン検査で、成長軟骨に変化があれば、確定診断が出来ます。
  • 治療は、まずは安静を保ち、アイシング、大腿四頭筋のストレッチ運動を行い、オスグード病サポーターを着用します。痛みが強い場合には、消炎鎮痛剤を使用します。数週間から数か月間で症状が改善されたら、スポーツを徐々に再開していくことが望ましい。

膝蓋靭帯炎

  • 膝蓋靭帯は、お皿の下方からすねの上に繋がる靭帯で、蹴る、走る、ジャンプなどで膝を伸ばすとき使われています。靭帯の炎症による痛みが生じることを膝蓋靭帯炎といいます。膝蓋靭帯炎は、主にバスケットボールやバレーボールのスポーツで、頻繁にジャンプすることで起こります。そのために、ジャンパー膝と言われています。しかし、スポーツをしなくても、膝蓋靭帯炎が見られます。
  • 最初の症状は、激しくスポーツをした後、膝を伸ばす時、お皿の下方に痛みを感じるようになります。悪化していくと、スポーツ中にも痛みが生じるため、スポーツに支障をきたします。さらに、悪化すると、階段のぼり、立ち上がりなどの日常生活動作にも痛みが生じます。
  • 原因としては、主に使いすぎることによって、膝蓋靭帯に繰り返してストレスがかかり、靭帯に微小断裂が起こり、体がそれを修復しょうとして炎症反応が引き起こされさます。微小断裂が続いていると、炎症による痛みと靭帯の弱体化が生じます。そのほかに、大腿四頭筋や膝後ろのハムストリングスが硬い場合にも、膝蓋靭帯に余計な負担がかかります。また、筋肉のインバランスのため、脚のある筋肉がほかの筋肉より膝蓋靭帯を強く引っ張ることで、不均衡の牽引力も靭帯炎を引き起こします。体の警告サインの痛みを無視して無理にすると、痛みと靭帯の弱体が進行します。それが数週間以上続くと、難治性腱障害となります。
  • 治療としては、まず痛みがある間にスポーツを中止します。ストレッチを行い、筋肉の緊張を緩和し、筋肉と筋腱を伸ばします。膝を伸ばしたままで、ゆっくり下腿をおろすことで、脚の弱い筋肉を強化します。膝蓋靭帯バンド(上図、ミズノ)を使って、靭帯の負担を分散させます。膝蓋靭帯のアイシング、マッサージなどで、痛みを減らします。痛みが強いとき、消炎鎮痛剤を使用します。激痛の場合は、膝蓋靭帯の腱鞘に、ステロイドの注射は有効ですが、頻繫ににやると、靭帯が弱くなる恐れがあります。

シンスプリント

  • シンスプリントは、下腿の中に最も大きい骨すね(英語でシンボン)で、すねの骨についている骨膜・筋腱・筋肉に繰り返してストレスがかかり、すねの内側に沿って痛みが生じる病気です。主に、ランナーやダンサーや新人兵士に見られます。特に、競技選手が突然に強化運動や訓練方法変更によって、引き起こされます。シンスプリントは、医学的に、英語では内側脛骨ストレス症候群、国内では脛骨過労性骨膜炎、脛骨内側過労性症候群と言われています。
  • 原因としては、新人ランナーやダンサーや兵士であり、今までの下腿の使い方が変わったこと、訓練の時間・頻度・強度の変更と、あるいはランナーが変わった地形で練習を始めることによって、すねの内側にストレスがかかり過ぎて引き起こされます。また、扁平足や足のアーチが普通の人より高い場合も起こります。
  • 症状は、最初にすねの内側に痛みが感じるようになり、下腿に軽いむくみが見られます。運動を休めば、痛みが自然に軽快するのは多いです。痛みを無視して無理やりスポーツを続けると、やがてストレスによる炎症、または疲労骨折に発展していきます。
  • 診断は、症状のみで、診断がつきますが、レントゲン検査で、疲労骨折やその他骨の病気を除外しなければならない。
  • 治療としては、まず安静を保つことです。アイシング数日間、1回10分程毎日4回を行います。痛みが強い場合、湿布や消炎鎮痛剤を使用します。症状が改善したら、徐々に訓練を再開し、必要があれば、新しい合う靴を履き、ショック吸収インソールを使用します。扁平足の方は、予防的にアーチサポートが有効です。

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